Northfields「仙台のカフェで文化をつくる」〈前編〉

点と点をつなぐインタビュー vol.3

Northfields「仙台のカフェで文化をつくる」前編
シュースミス猪苗代夏海さん・James Shoesmithさん/Northfields

2016年秋、晩翠通りにオープンした小さなカフェ「Northfields」。今や仙台だけではなく県外からもその雰囲気を一度味わおうと、連日多くの人が訪れる仙台のランドマークともいえるお店だ。

「イギリスにあるような、小さいけれどあったかく、スタッフとお客さんの距離が近いカフェを仙台につくろう!」と、お店を開いたのは、仙台出身のシュースミス猪苗代夏海さんとイギリス出身のJames Shoesmithさん。

仙台にお店を構えること、自分たちの表現を届けること、
そこから見えてくるお二人の哲学とは。

前編は、お二人の出会いとカフェを開くまでの歩み、
そして、カフェを開いてから経験したことや考えたことについて。


ふたりの手で作り上げたカフェ


Jamesさんと夏海さん © @makotoksendai

夏海さん(以下、N):もともと住居用の物件だったところを、知り合いの大工さんと私達でDIYをして、「Northfields」をつくりました。
壁は自分たちで塗り、大工さんにはエスプレッソマシンに合わせた台を作って頂いて。内装には、お互いが好きだったヴィンテージ家具を使いたかったので、宮城のイギリスアンティークショップやネットで購入しました。看板はイギリスのストリートサインをモチーフに、イギリスで作っていただいたものです。

―通常のカフェにはない珍しいお菓子も並んでいますよね。

N:常温でディスプレイできるお菓子にしたかったので、焼き菓子を中心に並べています。

Jamesさん(以下、J):イギリスはずっしりとした焼き菓子が多いですね。

—イギリスというと「紅茶」のイメージが強いですが、お二人は紅茶にもこだわっているんですよね。

N:「Brew Tea Co.」をお店で使っています。2012年にスタートしたブランドなんです。

J:私の大学の時の知り合いが「Brew Tea Co.」の前身であったカフェのオーナーと結婚したんです。そのカフェを閉店し、マンチェスターに引っ越して、工場から紅茶を作る今のスタイルを始めました。

N:カフェから紅茶専門店に移行して、ヨーロッパ全域だけではなく日本でも販売されるようになりました。イギリスはスタンダードなストレートティーというイメージが強いですが、「Brew Tea Co.」はハーブティー、モロッカンミントティーなど様々なバリエーションがあるので、色々な方に楽しんでいただける紅茶だと思います。

二人の出会い
仙台生まれ・仙台育ちの夏海さんと、イギリスで生まれたJamesさん。お二人が出会うまではどんな経緯があったのか。

—夏海さんは元々カフェで働きたいと思っていたのですか?

N:私は神奈川の短大在学中、都内のカフェでアルバイトをしたのがはじめてのカフェでの仕事でした。母とよくカフェ巡りをしていたこともあり、一番働くというイメージがしやすかったですね。
仙台の「カフェモーツァルト」で働いていた3年半は、接客からお菓子作り、経理のことまで、カフェの全てを学べました。ここでの経験はとても濃く、自分のお店を持った今、その経験が生きていると思います。

—カフェで経験を積む一方で、海外に行きたいというお気持ちもあったんですよね。

N:初めて一人で海外に行ったのが「カフェモーツァルト」で働いていた時期の2ヶ月間のアメリカでのホームステイでした。短大で保育を学んでいたため、ホストファミリーのお子さんをお世話していたのですが、車もなく、家でずっと一人でお世話をする日々がとても大変で…不完全燃焼のまま帰国してしまったので、もっと自分に合う場所があればと思いました。

—そして、イギリスへも行かれたんですね。

N:2013年の夏、ワーキングホリデーで2年間イギリスに行きました。
イギリスのビザは年に1回しか抽選がなく、なおかつ日本で1,000人しか受からないので、カフェで働きながら「とりあえず」という気持ちで申請したら通ってしまって(笑)ワーホリ中、最後に住んだのがロンドン西部にあるNorthfieldsという街でした。

—Jamesさんはイギリスのご出身です。

J:僕は10歳までイギリス北部のランカシャー州で暮らし、その後、今の実家に引っ越しました。お店に飾ってある絵は僕の父が描いた住んでいたところの絵です。引っ越したばかりの時は何もないところで驚きましたが、とても素敵な場所です。10軒しか家がないからみんな仲が良くて。

—自然があふれる場所でのびのびとされていたのですね。大人になってからは色々な職業を経験されたんですよね。

J:はじめて働いたのは、大学の時の自転車屋さんでした。大学のプログラムで日本に留学して、帰国後にJET(ALTになるプログラム)に応募したところ、通ってしまって(笑)ALTとして、大分県の津久見市で2年間働いていました。
その後、ロンドン西部で貿易関係の仕事に就いていた時、幼稚園で働いていた夏海と出会いました。大学で学んでいたのは国際ビジネスと日本語だったので、今の仕事に生かされているところがありますね。

N:Jamesは日本に住んだこともあって、言葉だけではなく日本人の感覚や文化にも理解があったので、とても親近感がわきました。

—初めて出会ったのがNorthfieldsにあった夏海さんお気に入りのカフェだったとか。

N:そのカフェのイメージがとても好きだったので、今のお店作りの参考にしました。看板のあるパレットなども、リサイクルしてインテリアにしたものです。

カフェを開くまで

お互いのタイミングが合ってロンドンで出会い、パートナーとして歩み出したお二人。カフェの開店に行き着くまではどんな経緯があったのだろうか。

N:私のビザが切れるという時、Jamesも日本に来てくれるということで、二人で東京での生活を始めました。私は保育園で、以前からコーヒーに興味があったJamesは表参道のカフェで働きました。

J:僕はその時が初めてのカフェでの仕事で、カナダ人のバリスタの方にエスプレッソマシンの使い方を教わりました。

N:半年ほどたった頃、東京での生活に疲れてしまったんです。ある時、二人で仙台に遊びに来た時、Jamesが仙台の空気感をとても気に入ってくたこともあり、仙台に戻ることを決めました。

N:もともとお互いカフェでのんびり過ごすことが好きで、自分のお店があったらいいね、と「夢」ではなく「理想」として話してはいたんです。
仙台に戻ったらどのような生活をしたいかを考えた時に、カフェを開くという話があがりました。

N:カフェを開くと決めた時、一番背中を押してくれたのは父でした。
自分でビジネスを始めることをとても前向きに考えてくれて。この物件を見つけてくれたのも父だったんです。カフェをやろうと決めた時、まだ東京にいたので物件探しがなかなかできなかったのですが、そんな時に父が「もう物件押さえておいたよ」と相談もなしに(笑)
最初見に来た時は手つかずの和室だったので、どうしよう…と思いましたが、
今となってはこの場所で良かったと思います。

クラウドファンディングの支え、そしてオープン
カフェオープンにあたり、クラウドファンディングサイト「CAMP FIRE」で協力の声を仰いだお二人。最初は知らない人に向けて「お金をください」ということに、気後れもあったという。

N:知人だけではなく、知らない人までたくさんの方が私たちの想いに賛同してくだって。「是非、仙台に素敵なカフェをオープンしてください」という声が、オープンすることへのモチベーションに繋がりました。

J:最初は二人とも目標達成できない、と思っていて。

N:そんな時に、一人で200万円を集めて東京でコーヒースタンドをオープンさせた女性のページを見て、私達にもできるかも、と背中を押されました。

—見事、目標達成されて、エスプレッソマシンを購入されたんですよね。

J:お店をオープンする際に、仙台でエスプレッソマシンを導入しているお店が少ないことを知りました。

N:今でこそ日本はコーヒーブームですが、私がロンドンへ行く前はエスプレッソマシンはポピュラーなものではありませんでした。ロンドンのカフェはほぼ必ずエスプレッソマシンがあるので、イギリスを意識したカフェを開きたいと思った時にどうしても必要でした。

イメージは「イギリスにあるようなカフェ」
—仙台でイギリスのカフェを開くことについて、思い描いていたものと実際のギャップはあったのでしょうか。

N:私がイメージしていたものは、いわゆるアフタヌーンティーのような格式張ったものではなく、カジュアルな雰囲気のものでした。

J:「イギリスのカフェ」ではなく、「イギリスにあるようなカフェ」ですね。

N:イギリスだからと言って紅茶をメインにするわけではなく、かといってコーヒーがメインでもなく。どちらにも特化しないバランスの良さが欲しかったんです。紅茶をもっとカジュアルに楽しんでほしい。その想いが少しでも浸透していればいいなと思います。

-イギリスのお店での店員さんとお客さんの距離感はどんな感じでしょうか。

N:日本のマニュアルに沿った接客は受ける側も力が入ってしまいますが、イギリスは、一個人として対等に接してくれる心地良さがあります。
私たち自身も肩の力を抜いてお客様とお話ししたいと思っているのですが……

J:人によりますので、難しい事ではありますね。

N:イギリスの接客は、イギリスの文化や環境から生まれた雰囲気だと思うので、イギリス風にしたいといくら私たちが言ったところで、私たちが「こうしたい」という気持ちだけでは成り立たないということも学びました。日本なら日本の、仙台なら仙台の雰囲気、お客さんが作る雰囲気があるからです。

変わったこと、変わらないこと

—お店をはじめた当初から、変わったこと、変わらないことはどんなことですか?

N: 小さなお店ですが、ケーキとコーヒー・紅茶で、ゆっくりと時間を過ごしてほしいなという想いは変わりません。いことに、たくさんの方に来ていただけていて嬉しい反面、私たち自身ゆっくりとお客様と話したり出来ないこともあって、もどかしくも思っていました。
そこで昨年は、私個人としてやりたいと思っていた、カフェの夜の時間帯の営業を予約制でやってみました。昼間の明るい雰囲気とはまた違った夜のお店の雰囲気を味わってほしくて。キャンドルを灯して、おひとりの時間をゆっくり過ごしていただきました。「昼間来られないので仕事終わりにゆっくりできてよかった」なんて声もいただいたので、またやりたいですね。

—ご夫妻でお店をやられています。働き方は以前と変わりましたか?

N: 以前は2人でお店を回していましたが、私の高校の時からの親友が入って3人でお店を回せるようになったことがとても大きいです。
2人の時は手が離せなくて出来なかったことが、3人になったことで余裕が生まれました。何より、彼女が夫婦のクッション役になってくれているので、気持ち的にプライベートと仕事を分けられるようになりましたね。

—今後の構想は?

N:やりたいことはいっぱいあるんですが、カフェがベースとしてあれば、いろいろできるな、と思っていて。服のイベントもできるし、ワークショップも色々な可能性がある。

また、今テイクアウトしてますか?と1日に2〜3回聞かれるような状況です。今回のコロナウィルスの感染拡大を受けて、家でもゆっくりとお茶を楽しんでもらえるように、お菓子のテイクアウトもやってみています。これは、常時やっているわけではありませんが、お子さんがいらしたり、時間が合わない方でも落ち着いてケーキを食べてもらえるように、いつかは導入したいなと思っています。
それから、カフェ営業だけではなく、お店オリジナルのトートバッグ、紅茶やティーカップなど、ちょっとずつイギリスのいいものを販売しているので、そこも充実させていきたいですね。

後編につづく
sendaiculturesen.com/archives/1124

WRITTEN BY
SEN.
仙台の文化の点を線でつなぐ、カルチャーマガジン“セン”。 仙台の文化的な場所やひと、アートなどにフォーカスし、仙台の良さ、仙台らしさを発信すべく、活動の場を広げている。SEN.のウェブメディアでは、仙台に携わる人それぞれの視点で切り取った情報を発信。異分野の人同士がトークを展開する、「点と点をつなぐインタビュー」も配信中。
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