環ROYにとって仙台とは?レペゼン仙台とは言いづらいニュータウン理論

点と点をつなぐインタビュー vol.4

環ROYにとって仙台とは?
レペゼン仙台とは言いづらいニュータウン理論
環ROY × 大久保雅基

仙台のとあるニュータウン。真っ白な霧雨の中、ヘッドフォンを耳にスローなテンポで歩く環ROYさんの姿があった。
環ROYさんは、主にラップを用いた音楽で唯一無二の存在を築いているミュージシャンでラッパーだ。仙台で生まれ、高校を卒業するまでを過ごした。仙台についてどう思っているのだろうか。環さんが育った町で、仙台在住の音楽家、大久保雅基さんが話を聞いた。


ラッパーが地元をレペゼンするのは、
単なるヒップホップの行動様式


大久保雅基さんと環ROYさん

大久保雅基(以下、大久保)
仙台にはよく帰省されるんですか?

環ROY(以下、環)
お正月かお盆、年に1回か2回くらいです。

大久保
たしか高校を出て、すぐ東京に行かれたんですよね。きっかけはヒップホップですか?


ヒップホップは関係なくて、単純に実家から出て一人暮らしをしたいなという望みだったんです。

大久保
東京や仙台の土地に対しての帰属意識はありますか?ラッパーだからといってレペゼン仙台という気持ちは特にないとおっしゃっているのを聞いたことがあったんですが、本当なのかなって。


地元をレペゼンするというのは、単なるヒップホップの行動様式だと思うんです。東京とか仙台はなくて日本なんですよね。

大久保
そうなんですか。でも、環さんのアルバム『少年モンスター』(2006年)の『鼻歌』という曲の中で、「寒い仙台思い出して」って歌っていたので仙台に想いがあるのかと…。


そんなこと言ってたんだ。全然覚えてなかった。(笑)11年前だもんね。細かいところまでチェックしてもらってありがとうございます。

大久保
『少年モンスター』は、僕が最初に買った環さんのアルバムだったんです。この歌詞を聞いて、環さんは仙台出身なんだって知りました。そして『そうそうきょく』(2013年 アルバム『ラッキー』収録)でも震災のことに触れられているから、仙台に特別な思いがあるのかと思っていました。


そうそうきょく / 環ROY


あの時は「地元の海がめちゃめちゃになっちゃったなぁ」って悲しい気持ちになったなぁ。帰属意識、ないと思ったら確かにありました!
今は、西洋文明や東洋文明の延長線上にある日本や中国というような、大きなスケールでしか歴史を掴めてないんだと思うんですよ。もうちょっとローカルにフォーカスを絞っていったら、仙台藩とか、宮城とか、東北とか、蝦夷とかに興味が湧くかもしれないんですが。

均質化しようとする力学が働いていた、
ニュータウン論

大久保
環さんは言葉を扱った表現をされていますが、地方の言葉には興味ありますか? 例えば同じ単語でも、「こわい」という言葉は、標準語では「恐ろしい」って意味だけど、仙台弁では「疲れる」って意味になりますし。


耳障り的にも心地いいとか悪いとかあるよね。主観だけど、岡山の人の喋り方は可愛いなぁって思ったり、九州弁や名古屋弁が気持ちいいと思ったり。

大久保
耳障りでの違いもありますよね。環さんは標準語を聞いて育ったんですか?


この町は標準語でしたね。新興住宅地はいろいろな人が入ってくるから、最初の段階で方言を隠すのかもしれない。均質化しようとする力学がすごく働く住環境だと思うんです。そこで育っちゃうと、町に文脈がないんだよね。

この辺は、伊達政宗が鷹で兎を狩る遊びをしていた土地で、ただの山だった。ある日突然ゼネコンが「開発します」と言い始めて、山を平らに切って、そこに全く同じ形の家をいくつも建てた。歴史的な経緯を辿って、町が形成されていった形跡は一切ない。

人工的に生まれた密集した住環境に、いろいろな土地の人が入ってくることで、例えばあの人だけ関西弁となったら浮く。だから、みんな同じように振舞おうとする。新興住宅地って同調圧力が非常に働きやすいところだと思います。

そんな環境で育ったので、仙台とか宮城とか言われても、中々ピンとこないというところがあるのかなぁと思ってるんです。

大久保
この町は、特にそういったことが顕著だと思うんですけど、仙台の中心部でも似たような感じはあると思うんですよ。30代くらいの人が小中学校に通っていた時には、お父さんお母さんがだいたい標準語になりつつあって、仙台弁は、おじいちゃんおばあちゃんと学校の先生が使っていた言葉という感覚があると思います。


高校に入って初めて、同世代の人が訛ってるのを見ました。その人たちは塩釜とか多賀城の方面から通っている人たちで、たぶん拡大家族で暮らしてるから、方言が身近なんだと思う。

大久保
インタビューでは仙台のことを伺おうと思っていましたが、もっとローカルな話題が出てきて面白いですね。


ニュータウン理論だね。だからある種、全国のニュータウン育ちの人の方が、同じ国家なのかもしれない。宮城とか長崎とか大阪とか関係なく、一定の時期に、ニュータウンで暮らした人の方が同じ地元感を共有している可能性がある。

大久保
なるほど。 震災後、各地に復興住宅地帯が作られていますが、きっとニュータウンと同じような状況になる可能性はありますよね。いろいろな土地から人が集まってくるので、隣に住んでる人の顔もわからないところから生活を始めなければならない。


自分で「こんにちは」と言えばいいだけじゃない?

大久保
環さんは東京で一人暮らしする時も、隣人に挨拶する派ですか?


行きますよ。その方がいいことしかないから。都市化するということは、分断されるということだと思うんだよね。世の中核家族だらけだけど、挨拶に行かないというのは、分断されて行く力に抗っていないということになるから僕は行きます。

大久保
そこは抗うんですね。


抗います。分断しない方が、出生率が上がるでしょ。子どもができてみて、子どもを育てるというのは、拡大家族以上の頭数のコミュニティで取り組むように設計されているというのがよくわかりました。拡大家族プラス近所で取り組んでいた時はもっと気が楽だったと思うんです。

大久保
確かに、一人あたりの仕事量や労働時間が増えている現代、育児に充てる時間はどんどん失われていってます。こんな時代だからこそ拡大家族や近所の人が手を取り合うべきなのかもしれませんね。

※このインタビューは2017年に仙台で行われたものです。

環ROY
1981年、宮城県生まれ。東京都在住。これまでに5枚の音楽アルバムを発表、国内外の様々な音楽祭に出演。その他、パフォーマンスやインスタレーション、映画音楽、広告音楽、絵本などを制作。コラボレーションでの制作も多数行う。
http://www.tamakiroy.com/

2020
パフォーマンス作品「ありか」を「島地保武」とともに制作/パリ日本文化会館で上演

2019
日本科学未来館 ジオ・コスモス 常設展示「未来の地層 Digging the Future」の音楽を制作
絵本「まいにちたのしい」をオオクボリュウ、鎮座DOPENESSとともに発表
U-zhaan&坂本龍一 feat.環ROY×鎮座DOPENESSとしてミュージックビデオ「エナジー風呂」を発表
東京コレクションで発表されたANEI「F/W Runway」のショー音楽を制作

2018
ミュージックビデオ「ことの次第」が第21回文化庁メディア芸術祭にて審査委員会推薦作品へ入選
「矢野顕子」のCDアルバム「ふたりぼっちで行こう」へゲストボーカルとして参加
無印良品 CF「MUJI HOTEL SHENZHEN」へ出演
SONY PlayStation4 CF「PS4® Lineup 2018」の音楽へ参加 (58th ACC TOKYO CREATIVTY AWARDS ゴールド賞)

新曲「Protect You」 2020年8月5日発売

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高い評価を獲得したフルアルバム「なぎ」から3年ぶりとなる環ROYの新曲。
ラップは勿論、トラックメイキングも全て自身で行った完全セルフ・プロデュース楽曲。
井手内創が監督したMV、青木柊野による新しいアーティスト写真、環ROYによるPLAYLIST「in any case」も同時に公開されている。
https://ssm.lnk.to/protectyou

大久保雅基
1988年宮城県仙台市出身。音響技術やアルゴリズム作曲法を用いて、テクノロジーと音・演奏を融合させた新たな音楽表現を模索している。音にまつわる作家を取り上げクリエイティビティを共有する団体toneの代表。洗足学園音楽大学 音楽・音響デザインコースを成績優秀者として卒業。情報科学芸術大学院大学[IAMAS]メディア表現研究科 修士課程修了。名古屋芸術大学芸術学部デザイン領域、愛知淑徳大学人間情報学部非常勤講師。先端芸術音楽創作学会、日本電子音楽協会、日本AI音楽学会会員。
https://motokiohkubo.net/

撮影 嵯峨倫寛

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WRITTEN BY
SEN.
仙台の文化の点を線でつなぐ、カルチャーマガジン“セン”。 仙台の文化的な場所やひと、アートなどにフォーカスし、仙台の良さ、仙台らしさを発信すべく、活動の場を広げている。SEN.のウェブメディアでは、仙台に携わる人それぞれの視点で切り取った情報を発信。異分野の人同士がトークを展開する、「点と点をつなぐインタビュー」も配信中。
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