料理と建築の鮮度〈前編〉

 

SEN. 点と点をつなぐインタビューvol.1 前編

「野菜屋 カフェヴェルデ」オーナー 奥村 隆

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「LIFE RECORD ARCHITECTS」建築家 川上謙


異分野で活躍する仙台のキーパーソン同士が話をする「点と点をつなぐインタビュー」。第1回目は、仙台市青葉区荒町商店街にある「 野菜屋 カフェヴェルデ」のオーナー・奥村隆氏と、建築家で「LIFE RECORD ARCHITECTS」代表の川上謙氏。

 

「既にダラダラに溶けている場合はどうします?」
まずは自己紹介や雑談を自由にして、お互いの緊張を溶かしていきましょう、SEN.スタッフが声をかけると、奥村さんは笑った。

SEN.はじめての対談場所は、仙台市青葉区荒町商店街にある「野菜屋 カフェヴェルデ」。
宮城県内で生産された鮮度の良い野菜を、美味しく、楽しく食べられる店。
野菜の美味しさを引き出す奥村さんのイタリアンが話題だ。
夕方6時過ぎのすっかり暗くなった商店街、開店前のお店に、ぽっと暖かい灯りがともる。

 

 

料理と建築、ふたりのルーツ

ー奥村さんがお料理の道に入ったのは?
奥村:中学の時からですね。一番最初のお店もイタリア料理でした。中学出て、専門学校に行ったんですけど、その専門学校は料理の専門学校ではなくて、外国語専門学校、いわゆる英語を勉強する学校。そこに通いながらアルバイトしていたのが、イタリア料理のお店のウェイターだったんです。いわゆる接客の方。そこから、キッチンを見て、先輩方が作業をしているのに憧れて、キッチンに移動させてもらってからは、ずっとこの世界。途中和食やったり、接客をまた勉強させてもらったりしていました。

 

ー作っている先輩たちの姿に憧れたことが、料理の道へのきっかけと。
奥村:そうですね。料理に憧れたというよりかは、先輩たちの姿を見て、あ、俺も料理作りたいなという感じでしたね。
仙台で生まれ育って、20代は殆ど東京、横浜で勉強です。
ー仙台に戻ってこようと思ったきっかけは?
奥村:東京に疲れた…(笑) もともと都会育ちではないですし、戻ってきて、また東京に行って…を繰り返してましたね。20代後半あたりからは、料理人としていろんな食材を見てきて、地元の素材の良さに気づき始めて、ああ、やっぱり地元で料理をすることに幸せを感じ始めた。
東京はいろんなものが流通してますけど、やはり食材は鮮度あってのものなので、手には入るけど、クオリティとしてみたら、地元仙台の方がまるで違う。そこからは30歳過ぎてからは、ずっと仙台。

「野菜屋カフェヴェルデ」の内装を手伝ったのが、建築家の川上謙さん。
「LIFE RECORD ARCHITECTS」として、宮城県内を中心に、主に既存の建物に手を加えるリノベーション分野を担っている。この店も、元の内装に手を加える形での案件だったようだ。

 


ー川上さんが、建築分野に興味をもったのは?
川上:生まれ育った家が、おじいちゃんの作った家で、建築家に興味はあったけど、特に建築家になりたいっては思ってなかった。

ただ、絵を描いたり、立体的なものを作るのは好きだったので、山形の東北芸術工科大へ。
ーどんなお家なんですか?
普通の家ですけどね。普通ながらも、ちょっと愛があるような。
母親のお父さんなので、母の意見を聞きながら作ったみたいですけどね。おじいちゃんが建てたっていうのがすこし自慢でもありました。

僕は、山形で建築やいろいろな先生に出会ったんですけど、最初正直、山形とか田舎の方、何もないじゃんと都会ぶっていた。だけど、自分が活動していけば、何にもないところにモノやコトが生まれる、ということがわかってきた。例えば、街中でシェアハウスを作ったり、映画祭の時にゲストハウスを作ったりとかが、意外と学生の力で簡単にできてしまう。それが、ムーブメントになっていくことが、すごい面白いな、と思って。そこから、ローカルの面白さに気づいていった。

 

地産地消レストランへの一歩 

 

ーお二人の出会いは?
川上:きっかけは、僕のグラフィックデザイナーの先輩が、奥村さんと一緒に仕事をされていた時期があったそうで。その先輩からの 繋がりです。

奥村さんが、最初、宮城県加美町の農家さんのお野菜に惚れ込んだ。
この農家さんの敷地がとっても広く、その一部をリノベーションしてレストランを作ることができないか、という依頼があったんです。最初加美町で色々提案していたが、費用面で難しく…

奥村:加美町でレストランを開店するのは夢でしたが、やはり費用面が…
もともと僕が勤めていた会社の店舗が、仙台駅前の区画整備でビルが取り壊しになってしまうタイミング。
やはり現実的には、加美町でのオープンでは、苦戦を強いられることは目に見えていたので、まずは仙台でお店をスタートして軌道に乗せることができれば、加美町の農家レストランの道も開ける。僕としては加美町への夢に向かって、まずは1店舗目を開いたというわけです。

川上:この物件はどうやって見つけてこられたんですか?

奥村:このお店は、2人のオーナーがいるんです。僕と、もう一人のオーナーさんで平日のお昼だけ。その方から、そのお店のメニュー開発とスタッフへの調理指導をお願いされたのがきっかけ。それを受けていただけるのであれば、夜の時間と土日を好きに使っていただいて構わない、ということで出店を決めました。
昼間は桑の木カフェ。6時からは、野菜屋カフェベルデ、と。

川上:変則的ですね。

奥村:意外と関東圏では、この形態がすごく多いんですよ。それがどっちも飲食店の場合もあれば、片方が飲食店で、片方が洋服屋さんとしてシェアしている場合もありますし。仙台ではまだ聞かないですね。
僕はお昼の時間帯にも関わっているので、意外とやりやすい部分はある。

ー ひとつのお店でやるよりも、違うひと同士が関わる機会が増えて、相乗効果ですね。川上さんはどのようにお店に関わっていったんですか?

川上:基本的にお店の内装ができている状態ではあったのですが、もともとの店舗に加えて新たにもう1店舗使うわけなので、収納が全く足りないという相談されて。その収納の部分をいかにいやらしくない感じで、どのように増やせるか。
内装で大切にした部分は、「野菜屋」ってことで、野菜をメインで出していきたいとお話をうかがっていたので、ちょっと泥臭いかんじ?元々の内装がフレンチポップで、きれいな印象があったんですけど、それだと綺麗すぎるかな、と。そこにすこし泥をつけるイメージで、土っぽいイメージでできればいいかな、と。
これは、奥村さんがご自身で確保されたんですけど、ワイン箱やりんご箱を農家さんから貰ってきてくださって、そういうものをかき集めて、有効なものを使ったので、コストも下げることができました。

奥村:そこの壁に打ってあるのは、全部ワイン箱やりんご箱ですね。
お店の看板も、昼間の看板は外観に打ち付けてあるんです。それを隠しつつ、夜の看板を雰囲気あわせてつける。どういうのありますか?と無理難題を…(笑) 木製で、昼の看板の上にかけられるタイプ。終わったらはずせる。

 

ー川上さんは、こういうオーダーのお仕事って、今までありました?

川上:あんまりないですよね。やっぱりいつもは0からお客さんに合わせて設計することが多いんですけど、今回の案件は奥村さんの要望も伺いつつ、元々使っていたオーナーさんにも失礼のないように設計しないといけないなあと。そこのバランスはちょっと考えながら。面白かったですね。
ただ、それをやることで、きれいな植栽だとかも、奥村さんがご自身で植えられたり、味が出てきて、同じ店の中に違うものが入ってくると、空間って面白くなるんだなと感じましたね。

ー奥村さんのなかでは、こうしたいっていうビジョンはあったんですか?

奥村:お店が本当に白い壁で装飾が一切なくきれいすぎた。もうちょっとこう、アクセントがほしいなと思っていて。僕は素人なので、お花屋さんを紹介してもらって、その方にお手伝いしてもらいながら植物を選んでいったり。料理を提供する上では、白い感じって非常にプラスなんですけど、お客さん目線になった時に、何もない空間の中で食事っていうのも落ち着かないでしょうし。
観葉植物を見るのが好きだったし、あとはお野菜を連想させるのは緑。お店の名前のヴェルデって、直訳するとイタリア語でみどりって意味なんです。

ー訪れる度に、雰囲気が更新されているところがいいですね。
また、元々お店を作られた方の気持ちも考えるっていうのが、川上さんのお人柄が現れてるなあと思って。全て新しく変えてしまおうという人も中にはいるとおもうんですが。いいところを引き出してる感じがします。

奥村:まずこの人は、ノーと言わないんです。そして、察するんですよね。クライアントの頭にあるけど言葉にしない部分ってあったりするじゃないですか。
すごいなと思ったのが、加美町の農家レストランの話で、僕がこういう風にしたい、と要望を伝えて、次の時にある程度図面を見せていただいたんです。どうしても難しいことってあるけど、単純にできないじゃなくて、できないけどこういうやりかたなら可能だよ。っていうのを先回りして提案してくるので。
僕としてこういう店を作りたいけどお金はない。って言いにくいこともあるんだけどね。いつも先手うってくるので、この人すげえな、と。

川上:へえ~~。(笑)
1求められているものに対して、10応えたいというのはありますね。最初、加美のところの倉庫を改装して店舗を立てるお話は、別の方にされていたんですよね。その時は、「ぼろぼろなので、全部壊して、一から新築にしゃちゃえばいいんじゃない?」と言われたそうです。
それももっともなんですけど、奥村さんが思っている雰囲気はそうでもないし、私も、そういうできないとかはないなあと。絶対やれると思ったので。

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料理と建築の鮮度〈後編〉

 

 

 

WRITTEN BY
SEN.
仙台の文化の点を線でつなぐ、カルチャーマガジン“セン”。 仙台の文化的な場所やひと、アートなどにフォーカスし、仙台の良さ、仙台らしさを発信すべく、活動の場を広げている。SEN.のウェブメディアでは、仙台に携わる人それぞれの視点で切り取った情報を発信。異分野の人同士がトークを展開する、「点と点をつなぐインタビュー」も配信中。
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