料理と建築の鮮度〈後編〉

 

SEN. 点と点をつなぐインタビューvol.1 後編

 

「野菜屋 カフェヴェルデ」オーナー 奥村 隆

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「LIFE RECORD ARCHITECTS」建築家 川上謙

 


 

異分野で活躍する仙台のキーパーソン同士が話をする「点と点をつなぐインタビュー」。第1回目は、仙台市青葉区荒町商店街にある「野菜屋 カフェヴェルデ」のオーナー・奥村隆氏と、建築家で「LIFE RECORD ARCHITECTS」代表の川上謙氏。

 

メニューにない料理、リストにないオーダー、それはチャンス

奥村:僕もね、自分の仕事のモットーがあって。
料理って、今、昔に比べてもどこでも美味しいものを出してるでしょう?
その中で、僕の作る料理で何が違うといったら、味覚とか感覚で、美味しいものだけじゃなくて、今みんなこうやって携帯で写真撮る時代でしょ?だから料理を見た瞬間に写真を撮りたくなるような料理をずっと目指してきているのね。
撮ってもらった写真から僕の料理が発信していければいいし。
テーブルに料理が置かれた瞬間、「わ~」とか「きゃ~」とかっていいながら、写真をとってくれるようなもの。

 

 

その中で人の期待を越える仕事をしたいなと。それが、相手がお客様であり、以前であれば、社長であり、後輩だったり。とにかく人の期待を越える仕事をしたいなと、仕事ってそうありたいなと。
そういった意味では同じだなと思いましたね。

川上:僕が面白いな~と思ったのが、普通お店だと、メニュー表の中から選んで、ないものがあればそれはできませんというのが、基本。でも奥村さんは、そうじゃないんだよということを言っていて。
以前メニュー表にない「そばが食べたい」といったお客さんがいて、そこでノーっていうんじゃなくて、スタッフに「なんでもいいから、その辺のそば買ってきて作るから」と提供したという話を聞いて。
なんかその気持ちが、すごくいいなと思って。きっとお客さんは、クオリティの高いそばを食べたかったんじゃなくて、いろんな食べた中で最後にそばを食したかったっていう気持ちを察したということ。

奥村:だってお客さんの無理難題って、僕から言えばチャンスなんだもん。それでね、一万円のそば食いたいって言ったら、他で食べてもらうしかないけど、今すぐここでそばが食いたいと言われれば、チャンスで。
材料ある限りはお応えするようにしていますね。

川上:建築家として、僕にも似た考えがあって。
例えばその、「ここの中から選んでください、こういう間取りでこういう組み合わせです」って組み立てていく。
それで悪いとは思わないし、それでも良いのだけど、やっぱりそれじゃないものを求めている人もいると思うんです。そうじゃない人にこたえていく、言ってしまえば、世の中にある素材っていっぱいあるので。
例えば、そこに落ちている石をタイルにしたいんだ、とか。そういう要望があれば応えたいな、というのが建築家なのかな。すごくそこに共通点を見つけたなと思いましたね。

ー奥村さんは加美町の野菜に惚れ込んだとおっしゃっていました。素材をどう使うか、生かすも殺すも、シェフの腕、アイディア次第というところはある。建築と料理、分野は違えどそこの共通点はありますよね。

 

料理と建築、それぞれの素材の鮮度
野菜という、料理の肝になる素材への奥村さんの想いは、並々ならぬものがある。
奥村さんは、来店したお客さまに見てもらうため、契約農家の似顔絵を描いた紙芝居を見せてくれた。

 

 

ー自分の料理を食べて欲しい。その一歩手前の素材をつくっている、人にもフィーチャーしているのは素晴らしいですね。

奥村:やっぱりね、うちで扱っている野菜を使っている農家さんをまず知ってもらいたいという気持ちが一番。紙芝居は手作り。スタッフと一緒に。

ーこれもちゃんと農家さんとやりとりしてないと作れないアイテムですね。
県内の野菜ってやっぱり違いますか?

奥村:違いますね。鮮度が違う。例えば、トマトの旬の時期に、スーパーや八百屋に行って、
トマト並んでるところ見るとわかるんですけど、だいたい宮城県産じゃないものが幅を利かせてるんですよ。じゃあ、宮城県でトマト作っていないかっていうと、作ってるんですね。
宮城県のトマトどこ行ったのっていうと、よその地域に行ってる。
今は携帯でぴぴってやれば、世界の食材が何日か後には届くんですよね。
それはそれで便利なことだけど、便利が故に消費流通の形態がぐじゃぐじゃになっていると僕は思う。

やっぱり、宮城県で作った野菜を地元で消費するのが、一番収穫してから食べるまでのリードタイムって短い。他の地域で採れてから何日も経っているトマトよりも、取れて日数がたっていない野菜の方が、格段に美味しいし、日持ちも違う。いわゆる、地産地消ですよね。

うちは、朝採った野菜を、その日の夕方に届けていただいています。うちでお付き合いがあるのは10数件。ほぼ毎日誰かしら野菜を届けてくれる。(95パーセントは宮城県内、残りの数パーセントは山形と北海道)

川上:この間お店に食べに来て、コースメニューを頼みました。今日のお肉を選ぶときに、
「今朝、とれたイノシシの肉があるんだけど、召し上がりませんか?」と。
知り合いの猟師さんが、その場でとってきたのを捌いだものを食べることができたんですけど、
イノシシは初めてでしたが、すんごいおいしんですよね。
もっと臭みがあるのかなとか思っていたんですが、鮮度の問題なんでしょうね。

奥村:ここで出しているのは、私の知り合いの漆沢という地区のハンターの方が、
自分で打ってしとめて、解体して、内臓とって、ある程度処理終わったものを届けにきてくれるんです。おいしいんですよ、味が濃いんですよね。
ー食の鮮度の感動体験ですね。
建築のお仕事で、鮮度という概念はあるんですか?

川上:逆になんか、リノベーションって鮮度からちょっと離れているような気がする…(笑)

奥村:でも、建築家の方の知恵が入って、古かったものとかイメージが、どんどん刷新されることがあるよね。アイディアを諦めると、鮮度が落ちていくんでしょうけどね。

川上:そうですね、鮮度っていうのを別の意味で捉えると、劣化というものを意識して設計しているのはある。例えば、安価な素材のものを使えば、やっぱり劣化した時に、安っぽい壊れ方をしたりとか、
使えなくなったりすることはありますが、逆に良い素材をちゃんと使えば、それが古くなった時にさらによく見える。そういう素材の選び方を大事にしているかもしれないですね。
フローリング材でいうと、手軽なものだと、シートになっているものは、傷つきにくいとか、メンテナンスフリーという風に言われていますけど、やっぱり無垢材とかを使っていくと、年々味わいが出てきたりとか。伸縮で反ったりするんですが、それもまた味というか。どんどん愛着がもてるものになっていくのかな、と。逆の鮮度を考えて設計しているのかもしれないな。

建築と料理。一見交わらない分野が、「鮮度」という点で繋がる。
その時、朝採りのにんじんを丸ごとつかったお料理がサーブされた。

 

 

「にんじんステーキ」、この店の看板メニューだ。
「すご~い!」「美味しそう!」
暫し、一同スマートフォンやカメラで撮影タイム。まさにこれが、奥村さんの作る「写真に撮りたくなる料理」だ。

 

 

 

異分野でタッグを組め。それが体験の共有を生む
ーこれから、いろいろな分野の人が、手ととりあっていかないと、仙台の魅力も伝わっていかないという課題がある。今後、カフェベルデを通してやってみたいことは?

奥村:違う分野の方とタッグを組むことはすごく大事なことだと思う。
結局、飲食店の人間同士で何かをしようとすると、できることって限られる。
他の業種の方とタッグを組めば、広がりは無限だと思う。

今予定しているのは、味噌の生産者さんとのコラボ。
味噌汁離れをしている現代に何か良い提案はないか、と尋ねられていて、味噌ソムリエと知り合いに。
味噌玉って知ってますか?味噌に、高野豆腐とか、フリーズドライのネギとか、顆粒のだしとかを一緒にまるめて冷凍しておくの。その味噌玉をこのお店で作って、トリュフチョコレートのように可愛くラッピングして、親子参加型でワークショップとしてやるのを企画しています。
川上:もともと、体験型のレストランっていうのがコンセプトだったんですよね。
やっぱり、鮮度っていうのを一番大事にしたいっていうのと、自分で触れたものがそのまま料理になるというのを体験してほしいと。泥にまみれて野菜を採ってきて、自分で洗うところから調理するところからやって、それを味わう、というのを、農家さんのところでやりたい。

ー美味しいだけじゃなく、プラスアルファで県内のものをつかって、県内の人でやるっていうのは大事なことですね。

川上:僕も、奥村さんにお願いしたいことが…ある場所でお料理を作って欲しくて。

奥村:もちろん、大歓迎です。わくわくしますね。
その前に、みんな、熱いうちに、早く食べて?

さくさくと大ぶりにカットしていただいたにんじんステーキ。
その柔らかさとフレッシュでフルーツのような甘みは、ぜひ、お店で味わっていただきたい。

 

 

奥村 隆 (「野菜屋 カフェヴェルデ」 オーナー)
10代の頃からイタリア料理店で料理の修行を積み、仙台のイタリア料理店勤務を経て、2016年9月、宮城県の農家から直接仕入れた野菜を使ったイタリアンのお店「野菜屋 カフェヴェルデ」をオープン。野菜の味を生かした見た目も美味しく楽しい料理が好評。

「野菜屋 カフェヴェルデ」 公式ホームページ

「野菜屋 カフェヴェルデ」 公式Facebook

 

川上 謙 (建築家・管理建築士)
神奈川県相模原市生まれ。栃木県宇都宮市育ち。
大学入学と同時に山形県山形市に移住。
東北芸術工科大学院 環境デザイン領域卒業後に宮城県仙台市に在住。設計工務店に勤め、数多くの住宅や店舗等の設計施工に携わる。2015年LIFE RECORD ARCHITECTS 設立。

「LIFE RECORD ARCHITECTS」

 

Photographer はま田あつ美(rim-rim)
建築写真(新築、リフォーム、リノベーションetc)やイベント写真、ポートレートなどの写真撮影をメインに活動。東北芸術工科大学メディアコンテンツデザイン学科卒業。
http://rim-rim-md.tumblr.com/

 

Interview・Cordinate: SEN.

 

WRITTEN BY
SEN.
仙台の文化の点を線でつなぐ、カルチャーマガジン“セン”。 仙台の文化的な場所やひと、アートなどにフォーカスし、仙台の良さ、仙台らしさを発信すべく、活動の場を広げている。SEN.のウェブメディアでは、仙台に携わる人それぞれの視点で切り取った情報を発信。異分野の人同士がトークを展開する、「点と点をつなぐインタビュー」も配信中。
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