日本一の山に最速で挑む男の話

当日、ぼくはリュックに入れ忘れたものがないかそわそわしていた。

仙台に日本一の山があると聞いてから、ずっとこの日を待ちわびていた。

ただ登るだけではない。世界最速登頂記録を打ち立てる。それが今回の目的だ。

この日のために新品の登山用具を揃えたり、大年寺の階段で足腰のトレーニングを積み重ね、

万全の準備をおこなってきた。

当日の天気も良好。これ以上ないコンディションだ。

いざ山を目の前にすると、その存在感の大きさに心がざわめく。

「これが日本一の山か…。」と恐怖と好奇心が渦巻いた感情と向き合いながら、スタートの時を向かえる。

「よーい、スタート!」その合図と共に、ぼくは走り出した。

今考えると登り終えるまでの記憶はほとんどない。

それくらい無心で山を駆け上がった。

気づけばぼくは山頂にいた。

そして恐る恐るタイムを見る。

やった!ついに世界最速記録を打ち立てた!

喜びのあまりぼくは、トレッキングポールを天へ突き上げ雄叫びをあげていた。

記録1.44秒。

日本一低い標高3mの日和山から眺める景色は、タイムを計った友人のつむじすらも見下ろせなかった。

WRITTEN BY
イタリーさとう
1993年宮城県仙台市生まれ。通称よっくん。地元仙台を拠点に活動するローカルフリーライター/宮城マスター検定見習い。地元の魅力あるものにスポットライトを当てて記事や映像で輝かせることが得意。現在は利府町のシェア型複合施設tsumikiスタッフとして企画・運営に関わる。また、お笑い芸人としてもたまに活動中。特徴の太いまゆげは先祖代々の遺伝子情報に記載。
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