1TO2BLDG「この場所は自分たちのためにつくった場所ではない」〈後編〉

点を線でむすぶ人 vol.1

「この場所は自分たちのためにつくった場所ではない」
荒川瞳さん/1TO2BLDGオーナー

 

青葉通りに誕生した1TO2BLDG(イチトニビル)は、空ビルを1棟まるごとリノベーションをした複合施設だ。1Fはカフェ、2Fはショップとイートインスペース、3Fと4Fはイベントスペースになっている。

前編ではオーナーの荒川瞳さんに、場所をつくりたいと考えたきっかけ、ピンチを乗り越えてビルに出会うまで、場所づくりの工夫について聞かせていただいた。
後編では、デザイン事務所が運営するからこそできること、仙台のまちについて思うことをお聞きする。


 

デザイン事務所だから伝えられること、デザインはもっと自由でいい

―前半では、1TO2BLDGのコンセプトについて聞かせていただきましたが、裏テーマのようなものがあったら教えてください。

1TO2BLDGはデザイン会社で運営しているので、例えば、パッケージをデザインさせていただいた商品を販売しています。
普通だったらお客様に依頼されてデザインを納品したらそれで終わり。売り上げを上げるために引き受けた仕事なのに、どう売り上げが変化したか知らない。
何がどう売られている分からないのに「こういうデザインの方がいいですよ」 と提案していくことに違和感を感じていまして、それって仕事としてはちょっと無責任なのではないかと思い、自分たちのお店に自分たちがデザインしたものを置かせてもらっています。
販売をして、実際にデザインを変えてどう変化が生まれたのか検証をしているような感じですね。

それから、ジャーナルという冊子を発行して、読んだ人がどういった反応をするかについても検証しています。

お客様は保守的なデザインを好む方が多いです。そこでデザインをしている立場から、自分たちの見せ方をこのビルを通して伝えています。例えば、トイレのサインやテーブルのスタンドなどは、すべて手作りで見せ方を工夫しています。

デザインは実例がないと、なかなか受け入れられない方もいて。デザインの幅は広くて、もっと自由なんだよ、ああいうのもできるよ、こういうのもできるよ、というのを伝えたい。
デザイン部門のスタッフは「思いついたんだけど、これはいわゆる一般的な脳みそだよな」などと自問自答を繰り返して、見せ方について考えています。

何にしても、もっともっと私たち自身も、このビルをどんどん活用してデザインの知識や経験値を蓄えて、今後の案件で少しずつお返ししていければと考え日々奮闘しています。

 


1TO2BLDGオーナーの荒川瞳さん

 

仙台は「杜の~」とか「伊達な~」になりがちの保守的なまち

―荒川さんについてお伺いします。今は仙台を拠点に活動されていると思いますが、ご出身は仙台ですか?

山形県米沢市です。デザインの専門学校に入ったことがきっかけで仙台に来ました。

―こうしたお仕事をなさっている荒川さんの視点からみて、仙台はどんなまちだと思いますか?

保守的なまちだと思います。デザインや行動力などにおいて、例えば岩手や山形は、シンプルに言えば、面白いことやっている。そしてスピード感が早いように感じています。
しかし、仙台はどうしても、「杜の~」とか「伊達な~」とか、デザインも真面目な方向に行ってしまいがちですよね。つまらない、そういう感覚はありますね。

お店をやりながら色々なエリアの方と話していると、例えば丸森町の方とお話をした時には、 仙台に負けないぞ!というようなことをおっしゃっていました。マルシェにしても内容が濃いし、移住というテーマで様々な取り組みも行っている。また、廃ビルなどの使われてない場所の使い方は、仙台より自由度が高い。

仙台だと、何かの支店というような安心材料がないと貸してもらえなかったり、実例がないと事業プランが通らなかったり。新しいことをやりたいのに、実例が必要というのがそもそもズレがあるように思えて、そういう点で寂しさを感じることがあります。

ー確かに、東北の中では山形や盛岡は、「進んでいる」というわけではないですが、攻めているようなイメージはありますね。仙台は駅前も開発されて人通りも多く、賑わってはいますが、ただ都会なだけというように感じることがあります。

イベントの種類や回数も多いですし、賑わってはいますが、イべント内容の効果があまり見えず、内容の濃度が薄いとも感じますね。また内容・企画は素晴らしいのにデザインがもったいなかったり、いいイベントだからこそ時々残念な気持ちになることがあります。

 

人とのつながりが広がる場所として有効活用してもらいたい

―1TO2BLDGは、今も既に様々な思いを持って大切につくられていますが、今後さらにどういうビルにしたいですか?また、どんな人に来てほしいですか?

3Fや4Fをいろんな人に有効的に使ってほしいですね。認知度はまだ低いと感じています。業態関係なく、学生などの利用もどんどん増やしていきたいですね。

私自身、学生時代に発表する場がなかったので、そうした場所を必要とする専門学校や大学の方にもぜひ使ってほしいです。学生や事業を始めたての方のために、スタートアッププランを用意しています。

このアートスペースは、様々な人を取り込むことができるという利点があります。他のギャラリーだと、ギャラリー貸しだけですけど、ここは1Fでカフェもやっていますから、カフェ目当てで来た人にも、3F・4Fのギャラリーを見てもらえると思います。ギャラリーだけだと、知り合いだったり、本当にアートが好きな人しか取り込めないですからね。

また「イチとニ市」や「廃校備品の販売会」「古着の販売会」など当ビル側の企画も今後は、増やしていきたいですね。 このエリアには、スーパーがないので農家さんからの野菜直売なども現在企画中です。

 


3F、4Fの「アートスペース YOUTO(ヨウト)」

 

―最後に、いろいろな複合施設を見ていると「地域活性化のための複合施設」という見られ方をすることが多いように感じますが、荒川さんご自身は地域の活性化に貢献したいという思いはもたれていますか?

もちろん貢献したい気持ちはここでお店を構える一事業者としてはありますが、地域活性化を目的に活動しているわけではありません。この地域の問題点や改善点、様々な事業者・生産者との連携など、本来の目的を忘れずに取り組んでいく中で、この青葉通りの端っこで、コーヒー片手に散歩する人が増えたり、付近の飲食店さんにお客様増えたりと、以前と比べて何かが少しでも良くなれば、それが最良だと思っています。
その繰り返しの結果、客観的に評価されるものだと考えていますので、私たち側で「地域を活性化させたい!」と強く想っているということはありません。

まずはここの場所に来て、人とのつながりがどんどん広がる場所として有効活用してもらえたらいいなと考えています。

 


自分のお店を持つ人の多くは、自らのこだわりや好きを追求した空間、あるいは自分のひとつの居場所として構えることが多いと考える。しかし荒川さんは、自分自身にできることを考え、ビルに訪れるお客さんはもちろん、事業者や作り手である生産者、デザインで関わったお客さん、地域に住むたくさんの人々を大切に想い、それぞれをつないでいる。この姿勢こそ、今求められるものではないだろうか。

WRITTEN BY
pon
仙台生まれの大学生。ゼミで、まちづくりについて学んでいる。両親が使っていたフィルムカメラを譲り受け、撮影の練習中。まちを歩きながら、レトロな看板や面白い看板を見つけるとつい撮ってしまう。荒町の喫茶店「ぴーぷる」のナポリタンが大好き!
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